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『経営・管理』について

更新日:2023年4月8日

日本で起業して会社経営を行いたい外国人は、以下のいずれかの在留資格が必要です。


永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、高度専門職1号ハ、高度専門職2号、経営・管理


当事務所では、以下のようなご相談を多くいただいています。

  • 技術・人文知識・国際業務(以下略して「技人国」)で雇用されていた会社から解雇され、就職先が見つからないので起業したい。

  • 技人国の配偶者が、より多くの収入を得たいので起業したい。

  • 学校を卒業後に、就職ではなく起業したい。

永住許可が取得できればそれに越したことはありませんが、こちらのブログに記載した通り許可要件が厳しいです。

身分系の在留資格は、本人の意志だけでどうにか出来るものではありません。

高度専門職は、初めて起業する人にとっては事実上不可能と言わざるを得ません。

従って消去法で、経営・管理の在留資格への変更を希望するケースが多くなっています。


ここでは、既に日本に居住している方が当事務所に”経営・管理”の在留資格の許可取得をご依頼くださったときの流れをご説明します。


前提条件:

技人国 or 家族滞在 or 留学の在留資格をもって日本に居住している。

新しい会社ではマッサージ店を経営する。

店舗兼会社の本店は千葉県市川市欠真間とする。



1.資本金500万円を準備する


会社を作るだけなら資本金1円でも可能です。一方で、経営・管理の在留資格を取得するためには(つまり在留資格の申請までには)発起人1人で500万円以上が必須となり、会社設立後に増資する方法でもOKです。ただし、その資金の出どころを証明する以下のような資料が必要となります。

  • 100万円相当以上を日本に持ち込む:税関への申告書の控え

  • 母国の両親から日本への送金:送金明細書 + 親子関係の証明書類

  • 日本在住の両親や兄弟からの借入れ:金銭消費貸借契約書 + 親族関係の証明書類

  • 働いて貯めた預貯金:今までの給与明細書、雇用契約書、収支に関わる説明

一時的に友達から借りた見せ金では、会社設立は出来ても経営・管理の在留資格は許可されません。



2.店舗を準備する


会社を作るだけなら、特に条件はありません。一方で、経営・管理の在留資格を取得するためには(つまり在留資格の申請までには)以下の条件を満たしていなければなりません。

  • 自己所有の店舗物件 または 残期間2年以上で事業目的の賃貸借店舗物件

  • 賃貸借契約書の場合の賃借人は新会社名義

  • 看板、郵便受けの標識、店内の設備(電話、カウンター机、施術台、椅子・ソファー、タオル類、会計レジほか)が準備出来ていて、営業ができる状態になっている

なお、在留資格の申請をしてから許可が下りるまで3~4か月かかりますが、その間は営業ができませんので、先行投資した費用は数か月間眠らせておくことになり、売り上げが無いにもかかわらず賃料はかかってしまいます。経営・管理は資金的余裕がないと厳しい在留資格です。


店舗ではなく事務所を用意する場合、例えば貿易業やWeb開発業などを事業とする場合であっても、事務所の看板、事務用の机・椅子、電話、コピー機、PCなどのOA機器、書棚、金庫などの設備が必要です。 自宅、住居用物件、友人宅間借り、他社との同居、シェアオフィス、バーチャルオフィスは認められません。



3.定款を作成する


株式会社 or 合同会社、屋号、会社目的、決算月などを決めたら、テンプレートを基に定款を作成します。

株式会社を選択した場合は、市川公証人合同役場で認証を受ける必要があり、約5万円の費用がかかります。当事務所では電子定款を作成しますので、紙の定款作成で必要とされる収入印紙4万円を節約できます。

合同会社を選択した場合は、公証役場での手続きも費用も不要です。



4.会社設立の登記


定款の認証日以降、自分で自分の銀行口座に資本金500万円を振込(預入れでも可)します。その通帳のコピーが、法務局への登記における資本金の証拠書類となります。


よくある質問

  • 自分の口座でいいの? → はい。まだ会社名義の口座は無いので。

  • 振込んだ500万円はどうするの? → 実際のところ、通帳のコピーを取った後は自由にしてかまいませんが、建前上は会社のお金であり、発起人のお金ではありません。会社の決算処理は恐らく税理士に依頼することになるでしょうから、税理士から「あるはずの資本金が無い」と言われないようにすればよいかと思います。

  • 電子通帳でもよいの? → 問題ありません。

現在の法令及び判例では、法務局への登記は司法書士の”聖域”とされています。当事務所は行政書士事務所ですので、法務局への登記申請はできません。しかし、ITサービスが充実してきている昨今では、申請者ご自身でWebから簡単に手続きできます。

『freee会社設立』または『MoneyForwardクラウド会社設立』をお勧めします。

Web画面上の操作がよく分からないという場合は、有料ですが、当事務所において直接アドバイスを行います。


株式会社を選択した場合は、登録免許税として15万円かかります。

合同会社を選択した場合は、登録免許税として6万円かかります。



5.会社名義の銀行口座の開設


在留資格には直接関係しませんが、今後の事業を行う上で会社名義の銀行口座は必須です。上記の『freee会社設立』を使えば、GMOあおぞらネット銀行の口座開設申し込みができます。

昨今の金融機関では、マネーロンダリング対策の一環として、特に外国人が新たに設立した会社の口座開設を容易には行わないケースが多いようです。しかし当事務所では、取引のある金融機関をご紹介することが可能です(必ず口座開設ができることをお約束するものではありません)。



6.税務署等への各種届出


会社設立後は、各種届出が期限付きで定められています。この後の在留資格の申請において審査を有利に運ぶためには、適切に手続きすることが求められます。

  • 法人設立届出書(市川税務署)

  • 青色申告の承認申請書(市川税務署)

  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(市川税務署)

  • 給与支払事務所等の開設届出書(市川税務署)

  • 法人の設立等報告書(船橋県税事務所)

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届(市川年金事務所) ※ 社長1人会社で報酬額ゼロの場合は不要

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(市川年金事務所) ※ 社長1人会社で報酬額ゼロの場合は不要

  • 健康保険被扶養者(異動)届(市川年金事務所) ※ 役員・従業員に扶養家族がいる場合に提出

  • 保険関係成立届(船橋労働基準監督署) ※ アルバイト含む従業員を雇用したときに提出

  • 労働保険概算保険料申告書(船橋労働基準監督署) ※ アルバイト含む従業員を雇用したときに提出

  • 雇用保険適用事務所設置届(ハローワーク市川) ※ 従業員を雇用したときに提出

  • 雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク市川) ※ 従業員を雇用したときに提出



7.営業上の許認可


ここではマッサージ店の経営を例としていますので、特に必要となる許認可はありませんが、よくある例では以下のようなものがあります。

  • 飲食店営業許可(市川保健所)

  • 古物商許可(行徳警察署)

  • 宅地建物取引免許(千葉県)

  • 建設業(千葉県)

許認可の種類によっては、定款の目的に適切な記載があるかどうかや、必要な資本金額が定められていることがありますので、定款の作成段階で注意が必要です。


当事務所では、上記に挙げたような許認可の取得にご対応できます。



8.HP・メールアドレス開設、名刺作成


特にBtoCのビジネスであれば、独自ドメインを取得してHPを開設し、メールアドレスも作っておくのが良いでしょう。無料で使えるGmail(xxx@gmail.com)やYahoo!メール(xxx@yahoo.co.jp)などは、いかにも安っぽいイメージになってしまいます。

HPのURL(https://www.xxx.com)やメールアドレスが決まったら、名刺を作成しましょう。

これらは、入管の審査においては、事業を行う”本気度”をアピールする材料となりますので、有利に働くものと言えます。


当事務所では、ドメインの取得、HP作成、メール環境の構築をご提供できます。今までに提供してきたHPは、こちらのブログからご確認ください。



9.在留資格「経営・管理」の申請


「資本金500万円」のところで説明を省きましたが、なぜ500万円必要なのかというと、経営・管理の在留資格の許可要件としてその程度の大きさの事業規模が求められているからです。そして、従業員を2名以上雇用することをもって500万円以下の資本金でも可となっています。この場合の従業員は、日本人、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者でなければ認められません。つまり日本国の雇用に貢献しなさいということです。


ここではマッサージ店の経営を取り上げています。経営・管理の在留資格では、会社経営を行うことが許可されているのであって、お客さまにマッサージの施術をすることは資格外です。つまり、従業員を雇用しないことが不自然になってしまいます。一方で正社員を雇用すると、社会保険の負担がのしかかります。この点、アルバイトを使うことにより社会保険の負担を軽減するという方法も考えられますが、入管の審査においては正社員の雇用に比べてマイナスに働くものと考えたほうが良いでしょう。


ここまで来て、ようやく入管への申請が可能となります。

ここまでの過程が適切に行われ、証拠書類もちゃんと残してあることは当然ですが、それらと同じくらい重要なものが事業計画と義務の履行です。

  • 事業計画について

事業計画は、信ぴょう性に欠くものであってはなりません。理想を掲げて初年度からものすごく利益が出るような内容にしてしまうと、1年後に困ったことになります。最初の経営・管理は通常1年しか許可されませんので、1年後には必ず更新申請が必要となり、事業計画との乖離が大きすぎると説明が出来なくなってしまいます。

重要なのは、事業が継続できるかどうかという観点です。そのためには、まず大前提として売上総利益があることです。その上で、事業年度で黒字決算であること、もしくは仮に赤字決算であったとしても資本欠損を生じないことです。

しかし現実問題としては、会社設立から在留資格の許可が出るまで3~4か月は営業が出来ないので、第1期の事実上の営業期間はその分短くなってしまいますが、一方で経費である賃料などは12か月分かかる訳ですから、第1期は資本欠損が生じてもおかしくはありません。この場合、債務超過にはならないことと、その後の事業継続性について事業計画で入管に対してしっかり説明することが重要です。場合によっては、資本金を500万円以上にすることにより債務超過を回避する必要があるかもしれませんし、創業融資を検討する必要があるかもしれません。

  • 義務の履行

もう1つ重要なことは、事業者および経営者としての義務の履行です。所得税、法人税、住民税等の履行が遅れることなく適切に行われていること。被雇用者の労働条件、労働保険・健康保険・厚生年金の適切な加入と納付が行われていること。新たに経営・管理の在留資格を取得するときには、これらに関わる届出が適切に行われていることが重要です。



最後に


出来るだけ簡単に解説しようと思って書き始めたのですが、ものすごく長文になってしまいました。それだけ長い道のりになるという証でもあります。経営・管理の在留資格の取得は一つのプロジェクトです。プロジェクトは、かかわる人々がそれぞれの役割をきちん全うしないと成功しません。

他の行政書士事務所ではよく『全てお任せください』的な勧誘文句を見かけますし、ご依頼者の中には丸投げ感覚の対応をする方もいらっしゃいますが、そのようなケースはだいたい失敗します。もし初回許可がうまくとれたとしても、更新申請で不許可になります。


当事務所では、ご依頼者様の置かれている状況、将来への展望・夢・希望をしっかりとお聞かせいただき、それが叶うよう最良のパートナーとして最善を尽くしたいと考えております。



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